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SDGsコラム 第9回「気候変動(地球温暖化)について・その9」

SDGsコラム

2023年2月28日

SDGsコラム 第9回「気候変動(地球温暖化)について・その9」

こんにちは。ATC環境アドバイザーの立山裕二です。これまでエコプラザカレッジの講師として、また環境ビジネス情報の記事などを執筆させていただいておりました。

今回は、バックキャスティングの具体例を書かせていただきます。

バックキャスティングを使って描いた私の未来(循環型社会)ビジョン

私は、2003年に2100年のビジョンを描き、拙著で公表しました。力不足ではありますが、現在までその実現に向けて講演や執筆活動を通じて世の中に働きかけてきました。

その後20年経ちましたが、どこまで実現したでしょうか。
ここにその一部を取り上げて、自己評価してみたいと思います(※印の部分)。

皆様も組織や自分自身の未来ビジョンを描き、時々見直してみることをおすすめします。

1.地球環境

地球の平均気温は最大5.8°C上昇するといわれていましたが、温室効果ガスの排出が止まったことや森林の再生が進んだので、2°Cの上昇で収まっています。

※パリ協定で、産業革命前からの平均気温の上昇を2°Cより低く抑え、1.5°C未満を努力目標とすることが掲げられました。
海面上昇は30センチ程度上昇していますが、心配された島嶼国の消滅は起こっていません。ただし、海面上昇はしばらく続くと見られており、ここ数十年以内に移住を余儀なくされるかも知れません。移民(環境難民)の受け入れ態勢は、数十年前から整備されています。

森林面積は産業革命前に戻っており、今でも1年間に日本の面積くらいずつ増加しています。
「このままでは地球全体が森林に征服されてしまう」というジョークがはやっているほどです。「砂漠という遺産を保護せよ」という声も一部で出てきています。淡水資源は、森林の再生とともに復活しました。オゾン層はもうだいぶ前に復活し、オゾンホールという言葉が辞書から消えました。

酸性雨は化石燃料の使用を停止した時点でストップしています。酸性化した湖も、以前の状態に戻っています。

生物種も自然の増減のレベルを維持しています。
残念なのは、絶滅してしまった生物種が、もう戻ってこないということです。

2.地球社会

2100年の地球の総人口は70億人。
※病気の蔓延や戦争以外で実現するのはなかなか難しそうです。

国という単位がなくなり、大陸ごとに州政府が置かれています。この州は、基本的に自立した地域(村)単位の集合で成り立っています。

社会の形態は、いわゆる『水素社会』。水を電気分解することで水素を取り出し、燃料
電池として活用しています。

※少しずつ水素社会に近づいている感じです。

ただ水素を取り出す際に、多くのエネルギーを消費するので段階的に調達手段を変えてきました。

最初は、廃止される原子発電所からの電力を使用していましたが、次第に火力発電→太陽光発電→風力発電と変遷しています。
最近では、水の中に光触媒やデンドリマーと呼ばれる物質を入れ、そこに太陽光を当てるだけで水素が得られるシステムが完成しています。
※光触媒を使う水素製造法がかなり進歩してきました。

発電手段は、燃料電池が主ですが、風力、太陽光、地熱、海洋温度差、潮汐(波力)など、その地域に最もふさわしい発電システムも併用されています。
※再生可能エネルギーも進化してきました。

貿易の輸送手段は、基本的に「海水を燃料とする船(燃料電池駆動船)」です。

※日本初の燃料電池船「長吉丸」が、2015年8月5日に長崎県五島市の椛島沖で実証航行が披露されました。海水から分離した水素ではありませんが、さらなる進化を期待します。
航行中に海水を淡水化しながら船底に引き込み、この水から水素を取り出すというものです。燃料を積み込むことがないので、船体を極限まで軽量化することが可能になったのです。

旅行の手段は、水上では「燃料電池船」ですが、陸上では「燃料電池列車」が基本です。短距離の場合、平たん地では自転車が、起伏のあるところは電気自動車が使用されています。スローライフに価値をおいているので、よほどの緊急事態が起こらない限り、飛行機を使うことはありません。
※2022年現在、実用化はされていませんが、試作車は走っています。

3.日本の環境

山には緑が輝き、様々な動植物が強固な生態系を創り上げています。広葉樹、針葉樹を問わずその地域に最も相応しい樹木の種類とその組み合わせ」が植林の際に配慮されています。

河川は自然工法が施され、もとの蛇行に戻されました。湿地帯、竹林、防水林など洪水対策も万全です。洪水を阻止するのではなく、活用しようとしています。万一の場合の防災システムも完璧です。

自然のダムである森林地帯が甦ったので、人工のダムがほとんどなくなりました。

※日本初のダム解体が平成24年度から29年度まで6年をかけて実施されました。どの川にも汚水が流れ込むことがなくなったので、水質が改善され川底がはっきり見えます。

自浄作用が妨げられることがないので「下流ほど水がきれい」という川本来の姿が戻ってきました。魚や水生生物の種類も豊富です。

海は本来の美しさを取り戻し、豊富な生態系が戻っています。そして山や川とともに水の循環と食物連鎖をスムーズなものにしています。

温暖化で30センチほど水位が上昇し、砂浜が浸食されていましたが、最近は収まっています。

森林の復活とダムがなくなったことで、河川の上流から砂が補充されるようになったからです。

4.地域社会

子供の笑い声が至るところから聞こえます。みんなで声を合わせて歌っています。どろんこ遊びで顔が真っ黒。

遊び道具は自分たちで作ります。建築で余った木の切れ端などでユニークなものを作ります。まるで芸術品!

一家団らんが大原則です。仕事をしていても、食事の時間にはみんな帰ってきます。たくさんで食べる方が楽しいので、特に夕食は誘い合って誰かの家に集まります。みんな自家製の料理を持ち寄ります。

工業については、臨海部だけでなく内陸部でも行われていますが、やはり上空から工場らしきものは見えません。21世紀の初めにほとんどの工場をすべて地下に移して、地上部を緑化してきました。その成果が現在の森林地帯というわけです。

例外的に、どうしても地上になければならない工場だけが人が地上に造られたのです。よく見ると「お城のような美しい建物」が点在していますが、それが2100年の生産工場の姿なのです。

場は可能な限りクローズドシステム化されています。
使用する原料はすべて地上の森林から調達しています。

計画的に間引き材、落葉などを回収し、アルコール(バイオマス資源)や化成品・医薬品・食品の原料として使用するのです。最後に残った水蒸気を含む水を使い、燃料電池用の水素を作ります。

工場内から分離されてきた有価物は、他の工場または農業・牧畜業・水産業の資源として活用します。

地域単位で見ると、有害ガスはもちろん二酸化炭素や水蒸気でさえも一切排出さない「真のゼロエミッション」を達成しています。

工場など建築物を造る際の資源は、かつて大都会といわれたところに大量に蓄積されている「都市鉱山」から調達します。

20世紀から21世紀初めに建設された「超高層ビル群」「高速道路」などには、高い純度の鉄・金・アルミニウムなどが豊富に存在しています。再生困難と思われていたゴーストタウンが「優良鉱山」として甦ったのです。

また、更地が有機栽培農地や森林地帯として再生されており、この無人地帯(都市鉱山)もやがて緑豊かなコミュニティに生まれ変わることでしょう。

自然エネルギー発電所は、原則としてコミュニティ内には造られません。比較的大規模なものは近辺の海上や山林地帯に設けられますが、個人用については、自宅で様々な方法により自家発電します。

比較的多く使われているのは、「貯めておいた雨水から水素を取り出す」という燃料電池発電です。

交通手段は徒歩と自転車が中心です。車は電気自動車であっても、コミュニティ内に入ることはできません。

以前、障害者用専用道路が設けられていましたが、使う人がいないので今は低床式路面電車(LRV=LRT)、または燃料電池バスに変わっています。

コミュニティは家族、必ず誰かが手を貸してくれるので、障害者が一人で運転する必要がないからです。
ちなみにこのLRVと燃料電池バスは、歩くスピードよりも遅いのが特徴です。

食べ物のうち、とくに生鮮品は「身土不二」を基本としています。
つまり「食べ物に宿っている風土と人体に宿っている風土が一致すればするほど体によい。だから、その地域内で採れたものを食べよう」ということです。

当然、無農薬・有機栽培です(この言葉は2010年頃に-当たり前になって-死語になりました)。
※今、2023年ですが死語になっていませんねぇ。

しかも自給自足体制ができあがっているので、新鮮な幸を食べることができます。

気候条件により、すべてを自給自足で賄うことができない場合は、できるだけ近くから調達します。

鉄道に使用する電源は、路線区間によって1番確保しやすい手段で調達します。地熱発電が相応しい区間は地熱を、風力に向いているところは風力を使用するということです。

これによって遠隔地から送電する際のエネルギーロスを防いでいます。

高速道路は存在していません。車が移動する場合は、カーフェリーのように「車ごと貨車に乗せて」輸送します。

※こういうのをピギーバック輸送というそうですが、ずいぶん前からあるのですね。ただ日本では平成12年に廃止されました。

欧米のようなトラクターから切り離したトレーラーを積載する形で復活するといいのですが・・・・しかも燃料電池で・・・・。

コラム著者

サステナ・ハース代表、おおさかATCグリーンエコプラザ環境アドバイザー

立山 裕二