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SDGsコラム 第2回「気候変動(地球温暖化)について・その2」

SDGsコラム

2022年5月27日

SDGsコラム 第2回「気候変動(地球温暖化)について・その2」

こんにちは。ATC環境アドバイザーの立山裕二です。これまでエコプラザカレッジの講師として、また環境ビジネス情報の記事などを執筆させていただいておりました。

今回は、前号に引き続きSDGsの重要な課題でもある「気候変動(地球温暖化)」について書かせていただきます。

■(平均)気温上昇の意味

気温が上昇するといっても、地球全体が均一に熱くなるわけではありません。寒くなるところもあれば、干ばつや豪雨に見舞われるところもあります。

私たちにとっては、異常気象の増加として実感されることが多いでしょう。異常気象が増加しながら、長期的には気候が変動していく。このために、地球温暖化は「気候変動」あるいは「気候変化」と呼ばれているのです。

その主な原因は温室効果ガスとされています。

【JET・AMSのHPより】

◆温室効果のしくみ

温室効果ガスには、二酸化炭素・水蒸気・メタン・フロンなどがあります。なかでも二酸化炭素(炭酸ガス、CO2※)は、人間が排出している温室効果ガスのうちで、最も地球温暖化に寄与している物質です。

※CO2の2は小さな2です。このシリーズでは以後、より正確さを図るためにCO2ではなく二酸化炭素と表記することにします。

太陽の光によって地面の温度が上昇すると、地表付近の空気が温められます。そのとき大気中の温室効果ガスが熱の一部を吸収し、熱を蓄えます。その熱は赤外線として周囲に放出され、その結果、空気が暖められて気温が上昇することになります。

これは温室内部で起こっていることと同じなので、温室効果と名付けられたのです。

◆まずは温室効果に感謝しよう!

温室効果ガスの濃度と地球の平均気温は正比例の関係にあります。つまり温室効果ガスの濃度が高ければ高いほど地球の温度は上がり、濃度が低ければ低いほど地球の温度は下がります

現在、地球表面の平均気温は15~16℃くらいですが、もし温室効果ガスが含まれていなければマイナス18℃くらいになります。温室効果のお陰で、私たちが存在していると言えるのです。まずは温室効果に感謝しましょう。

とは言うものの、温室効果ガスは少し増えただけでも大きな温度上昇をもたらします。人間の活動から排出される温室効果ガスのうち二酸化炭素は、温暖化への寄与度が約60%もあるとされています。

◆地球温暖化の原因

地球温暖化の直接原因は、二酸化炭素などの温室効果ガスが増えていることです。大気中の二酸化炭素は、100万年前までは数千ppmほど存在していました。その後、海洋に吸収されたり森林の栄養となり急速に減少し、少なくとも1000年前から産業革命前までは280ppm(0.028%)程度で安定していたことが分かっています。

ここでppmというのは100万分の1を表す単位です。
100分の1を1%と言うように、100万分の1を1ppmと表します。

ところが産業革命以来、先進国は工業化を猛烈に進めてきました。最近では、途上国でも石油・石炭・天然ガスといった化石燃料やゴミ、プラスチックなどが大量に燃やされ、また二酸化炭素の吸収源である森林が大規模に伐採されています。

その結果、大気中の二酸化炭素がどんどん増加し、産業革命前までは280ppmだった二酸化炭素濃度が、2021年には416ppmを超えてしまいました。現在もなお、大気中の二酸化炭素は年間百数十億トンずつ増加しています

出典)EDMC/エネルギー・経済統計要覧2021年版

ワンポイント講座:平均と変化の大きさ

地球温暖化の本を読んでいると、たまに「平均」と「変化の大きさ」とを混同している文章に出会います。ここで「平均」とは、「いくつかの数を足し合わせて、その数で割った算術平均」であり、「変化の大きさ」とは「最大値と最小値の差」のことを言います。

たとえば、平均気温について見てみましょう。

ある年の1月から10月の気温が平年並みだったとします。10月は平年より5℃低く、真冬を思わせるほどでした。しかし、12月は平年より5℃高く春を思わせる陽気でした。11月と12月はまさに異常気象ですよね。

ところが、この年の平均気温は10月のプラス5℃と12月のマイナス5℃が打ち消しあって「平年並み」と計算されてしまうのです。

異常な数値は数年は覚えているでしょうが、10年もすれば○○年の気温は平年並みだったと聞いても「ふ~ん、そうだったのか」と納得してしまうのでないでしょうか。

一方、変化の大きさは「摂氏で10度」になります。人間を含む生態系は、これだけの変化の大きさ、しかも短期間での変動には対応しきれません

地球温暖化というのは、あくまでも「地球全体の平均気温」の上昇を意味しています。一部の地域の気温が上がったとか下がったとかの話ではありません。

実際に、「南極の一部では温度が下がっているところがある。だから温暖化が起こっているというのはウソである」というような意見もあるのです。

でもこれは、たとえば「クラス全体のテストの成績が5点上がった」と発表されたとき、「それは変だと思います。太郎くんの成績は5点下がっています。クラスの成績が上がったなんてウソです」と言っているのと同じです。

クラス全体で上がった5点は「平均点」で、太郎くんの下がった5点は「変化の大きさ」ですよね。

地球の平均気温は、陸上だけでなく、海洋のデータも考慮されています。具体的には、緯度5度と経度5度の四角形ずつに分けて測定した値を平均しています。もちろん観測機器や観測場所、周辺環境などの変化の影響もできるだけ取り除く努力がなされています。

海面上昇についても同様で、「地球全体の平均」を表します。これも、ある地域での変化の大きさ(変動)を言っているのではありません。

暖流近くでは水の熱膨張によって水位が上がり、寒流付近では収縮によって水位が下がります。また台風が来ると水位が上がるのは当然の話です。さらに地盤沈下すると相対的に水位が上がります。

地球温暖化で出てくる海面上昇とは、陸氷が海に流れ込むことや水温上昇による熱膨張や様々な変動もすべてひっくるめての平均値なのです。「ある地域で海面が下がっていることをもって海面上昇が起こっていない」と判断するわけにはいかないのです。

◆日本にとって「今そこにある危機」

残念ながら、私たち日本人は「身近に何かが起こらないと行動しない」人種になってしまったようです(もちろん全員ではありませんが)。

そして何かが起こってしまった後で、「想定外」という一言で片付けてしまうことが多くなってきているように思います。しかもこの「想定外」と言う言葉が、「想定(予想)していたが、対策を立てていなかった(あるいは無視した)」という意味になってしまっています

私たちは、いつまで「失って初めて、その価値に気づく」とか「いなくなって初めて、その人の存在の大きさを知る」ということを繰り返すのでしょうか。そろそろ「そうなる前に」対策を立ててリスクを避けること(予防原則)を学び、実践・行動に移す必要があると思います。

地球温暖化に関しては、例えば「ツバルやモルジブなどの島国が海面上昇で沈んだり、南極の氷が溶けると聞いても、遠い世界のことのようでピンとこない」とか「北海道が暖かくなって良いのでは?」という意見があります。

また「海面が上昇したのではなく地盤が沈下したのだ」という人もいるでしょう。

以前の私なら、「平均の話をしているときに一部の現象を持ちこまないでください」とか「他人ごとみたいに言わないでください」とムッとしながら対応したと思います。

しかし「ピンとこない」「脅威が実感できない」というのは、その人にとって真実なのです。だったら「ピンとくるように」「脅威が実感できるように」説明するしかありません。

と言うわけで、ここでは地球温暖化が日本に与える影響について取り上げることにします。

ただし、私は「危機感を煽り、ネガティブな気持ちにさせる」ことは本意ではありません。むしろ「温暖化が解決したら、こんなに良いことが起こる(実現する)」というポジティブ発想で環境問題やSDGsの課題を解決したいと思っています。

このことについては、昨年3月にご紹介した特別コラム 第12回「気候変動への対策がSDGsの達成にどのように結びつくか」をお読みください。↓です。

特別コラム 第12回「気候変動への対策がSDGsの達成にどのように結びつくか」

■フェーン現象の驚異

◆フェーン現象で40℃超えが頻発化する!

地球温暖化(海水温の上昇)に伴って水蒸気量が増え、モンスーン(季節風)が吹き上がる側の集中豪雨と、乾燥した熱風が吹き下りる側の高温化(フェーン現象)に注意する必要があります。

フェーン現象とは、「風上側から湿った空気が山を越えて吹き下り、風下側で気温が上がり乾燥する現象」のことです。

湿度の高い風が山の斜面に沿って上昇する時、100mにつき0.5℃の割合で気温が下がり、水蒸気の一部は凝結して雨となります。そして水分が減少した空気は、山を越えて反対側に吹き下ります。この時、100mにつき1℃の割合で気温が上昇し、暖かく(熱く)乾いた風となります。下図はフェーン現象の説明図です。

【図:フェーン現象の説明図(気象庁のホームページを一部修正)】

最近、大阪がことのほか暑いのも紀伊山地越えのフェーン現象によるところが大きいようです。また、2004年7月20日に東京の大手町で39.5℃(都内では未公認ながら42℃以上に達した所もあるそうです)という高い気温となりましたが、この原因もフェーン現象です(この場合、箱根越えの西風でした)。

記憶に新しいところでは、2020年8月17日に浜松市で41.1℃という国内歴代最高タイ記録が計測されました。フェーン現象で昇温した風が都市からの熱供給でさらに高温となり浜松に進入し、高温化したとされています。

◆トリプルパンチ

とくに都市部では、地球温暖化、フェーン現象、ヒートアイランド現象によるトリプルパンチを受けており、熱中症や病虫害のリスクが増大しています。

大阪や東京などでは、地球温暖化そのものに加えてヒートアイランド現象との複合によって、さらに異常な高温になることが予想できます。

ヒートアイランド現象とは. 都市部の気温が周辺地域よりも高くなる現象です。等温線を描くと都市部が島の形に見えることからヒートアイランド(熱の島)現象と呼ばれています。アスファルト舗装による熱の蓄積や、冷房とか車の排気熱などが原因です。

【気温が30℃以上の合計時間数の分布(5年間の年間平均時間数)】
~環境省「ヒートアイランド対策マニュアル」を元に大阪府が作成~

今後は、全国各地で40℃以上の超猛暑日(極暑日?)が続出すると思われます。

最高気温が35℃を超える猛暑の日には、熱中症のリスクが急増しているという研究結果もあります(富山国際大学:安藤満氏他の研究)。フェーン現象がいくら低湿度とは言え、40℃を超える気温は人体に甚大な影響を与えるでしょう。

◆山火事に注意!

フェーン現象が起こると高温になるだけでなく、大気が乾燥し、火災が発生すると大火事になることがあります。日本の山林は手入れ不足で乾燥化しており、特に山火事が心配です。山火事が起こると、木材資源の焼失(消失)だけでなく、二酸化炭素の発生源になってしまいます

私たちは、今こそ我が国の林業の復活と振興策も兼ねて、国内の山林を守り育てることに全力を注ぐべではないでしょうか。

このように「地球温暖化」はグローバルな現象ですが、地域に応じた対策も立てておかなければなりません

次号では「地球温暖化と台風との関係について」考えます。

コラム著者

サステナ・ハース代表、おおさかATCグリーンエコプラザ環境アドバイザー

立山 裕二