こんにちは。ATC環境アドバイザーの立山裕二です。これまでエコプラザカレッジの講師として、また環境ビジネス情報の記事などを執筆させていただいておりました。
今回からは、環境ビジネス情報とは別に、SDGsの重要な課題である「地球温暖化(気候変動)」について書かせていただきます。
では、地球温暖化(気候変動)の基礎から学んでいきましょう。
■地球温暖化って言うけれど・・・・
◆そもそも地球温暖化って何ですか?
地球温暖化とは、文字通り「地球の気温が上昇すること」です。
ただ環境問題としての地球温暖化は、「人間の活動に伴って温室効果ガスが大気中で増加することで温室効果が高まり、地球表面付近の平均気温が上昇していく現象」のことを意味しています。
ここで重要なのは、「地球温暖化の原因が人間の活動によるものとしていること」と「温度上昇とは、あくまでも平均気温の上昇を意味すること」です。
これらをハッキリさせておかないと、「地球温暖化の原因には、太陽活動の活発化など自然現象もあるはず」という当たり前のことや、「温度が低下しているところもある」という局地的な話が出てきて、頭の中が混乱してしまいます。
専門家はどう言っているかですが、最初にIPCC※が2021年に公表した「第6次評価報告書」の概要を見てみましょう。
※IPCCとは?
「気候変動(気候変化)に関する政府間パネル」のこと。1986年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が共同設立した国連組織。
世界の科学者が多数集まり、1990年に地球温暖化に関する報告書』を発表。1995年に『第2次評価報告書』、2001年に『第3次評価報告書』、2007年に『第4次評価報告書』、2013年に『第5次評価報告書』を発表した。そして2021年に『第6次評価報告書』を発表した。
2007年度のノーベル平和賞にアル・ゴア氏と共に選ばれた。
第6次評価報告書では、気候変動(地球温暖化)の現状を以下のように纏めています。ただし私の独断で纏めていますが・・・・。
IPCC第6次評価報告書の概要
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人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。大気、海洋、雪氷圏及び生物圏において、広範囲かつ急速な変化が現れている。
最近40年間のうちどの10年間でも、それに先立つ1850年以降のどの 10年間よりも高温が続いた。
21世紀最初の20年間(2001~2020年)における世界平均気温は、1850 ~1900年の気温よりも 0.99[0.84~1.10]℃高かった。
2011~2020年の世界平均気温は、1850~1900年の気温よりも 1.09 [0.95~1.20]℃高く、また、海上(0.88[0.68~1.01]℃)よりも陸域(1.5[1.34~1.83]℃)の昇温の方が大きかった。
IPCC第5次評価報告書以降、世界平均気温について推定された上昇は、主に 2003~2012 年以降の更なる温暖化(+0.19 [0.16~0.22]℃) によるものである。
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気候システム全般にわたる最近の変化の規模と、気候システム の現在の状態は、何世紀も何千年もの間、前例のなかったものである。
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人為起源の気候変動は、世界中の全ての地域で、多くの気象及び気候の極端現象に既に影響を及ぼしている。
熱波、大雨、干ばつ、熱帯低気圧のような極端現象について観測された変化に関する証拠、及び、特にそれらの変化を人間の影響によるとする原因特定に関する証拠は、第5次評価報告書以降、強化されている。
気候変動は既に、人間が居住する世界中の全ての地域において影響を及ぼしており、人間の影響は、気象や気候の極端現象に 観測された多くの変化に寄与している。
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人間の影響は、1990年代以降の世界的な氷河の後退と1979~ 1988年と2010~2019年との間の北極域海氷面積の減少(9月は約40%、3月は約10%の減少)の主要な駆動要因である可能性が非常に高い。
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世界全体の海洋(0~700m)が1970年代以降昇温していることはほぼ確実であり、人間の影響が主要な駆動要因である可能性が極めて高い。人為的な 二酸化炭素 の排出が、現在進行している外洋域表層海水の世界的な酸性化の主要な駆動要因であることは、ほぼ確実である。
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世界平均海面水位は、1901~2018年の間に0.20[0.15~0.25]m上昇した。
その平均上昇率は、1901~1971年の間は 1.3[0.6~2.1]mm/年だったが、1971~2006 年の間は 1.9[0.8~2.9]mm/年に増大し、2006~2018 年の間には3.7[3.2~4.2]mm/年に更に増大した(確信度が高い)。
少なくとも 1971 年以降に観測された世界平均海面水位の上昇の主要な駆動要因は、人間の影響であった可能性が非常に高い。
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世界平均気温は全ての排出シナリオにおいて、少なくとも今世紀半ばまでは上昇を続ける。向こう数十年の間に二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に、地球温暖化は 1.5℃及び 2℃を超える。」
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気候システムの多くの変化は、地球温暖化の進行に直接関係して拡大する。
この気候システムの変化には、極端な高温、海洋熱波、大雨、いくつかの地域における農業及び生態学的干ばつの頻度と強度、 強い熱帯低気圧の割合、並びに北極域の海氷、積雪及び永久凍土の縮小を含む。
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★特筆すべきこと
第5次までは、何%という(不確実性の要素を含んだ)確率の数字で「人為的な可能性がだんだん高くなっていることを」示してきました。
ただ6次で特筆すべきは、第6次では不確実性の要素が外れて
「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」
と言い切ったことです。
また同報告書では地上気温の上昇だけでなく、海の熱吸収や氷の減少などを総合的に評価した表現になっています。
ちなみに、2010年から2019年にかけて人間活動の寄与は+1.07℃に対して観測された変化は+1.06℃だったそうです。
ご注意
※気候変動と気候変化について
◆気候変動とは?
気候の平年状態からの偏差のこと
=climate variation(climate variability)
◆気候変化とは?
気候の平年状態が長期的に変化すること
=climate change
そういう理由で、気象学的には気候変化が正しいという人がおられます。
実は私もそう思います。
そういう理由だとしても、気候変動適応法ができたこともあり、今後も気候変化ではなく気候変動という用語が使われると思われます(ただ突然変更されることがあるので、頭の隅に置いていてくださいね)。
次回は、気候変動(地球温暖化)の影響について見てみたいと思います。
コラム著者