2020年6月に開設20周年を迎えたおおさかATCグリーンエコプラザでは、これからのwithコロナ時代を見据えたエコビジネスやESG・SDGsに関する情報を発信するため、当プラザの顧問で同志社大学 名誉教授 郡嶌 孝先生のコラムを配信いたします。
コロナのパンデミックが終息したとしても、経済や暮らしは、以前の経済や暮らしには戻らないであろうといわれている。環境主義者にいたっては、戻るべきもともとの経済や暮らしそのものが、異常な日常であり、コロナ以後に戻るべき日常であるとは考えられない。好むと好まざるとに限らず、いずれにしても、コロナ以後は「経済のニューノーマル」とか「新しい生活様式」が招来するとされる。
その経済・暮らしは、一つには、三密(密集・密接・密閉)を意識した可能な限りの「非接触経済」として、空間的・時間的距離を縮めるデジタル化の加速であり、今ひとつは、SDGsをさらに推進する「社会経済(贈与経済)」となろう。社会経済は、市場経済に取って代わるものではなく、市場経済を補完するものとして機能するであろう。経済とは、本来、「地球における棲まい方」であり、「社会を通じての自然と暮らし(生命)の物質代謝の手段」であり、目的(利潤の最大化)ではない。自然から資源を収奪し、ひたすら、成長を是とする物質的豊かさを追求してきた経済への反省を含むのが「社会経済」である。
当然のことながら、環境ビジネスもこのような動きと無関係というわけにはいかない。経済は、デジタル化の手を借りながら、より「循環経済」への動きを強めるであろう。循環経済は、自然循環と社会循環の二つの輪から成る経済である。この二つの循環によって、自然からのマテリアルの収奪を最小化し、自然へのマテリアルの廃棄を最小化し、したがって、マテリアルのフローを最小・細く・遅くし、マテリアルのストックを最大・長く・大切に管理するのが、循環経済の目的である。自然循環とは、バイオエネルギー(バイオリファイナリー)とバイオマテリアル(コンポストを含む)を供給する「バイオケミカルエコノミー」であり、社会循環とは、マテリアルのリユース(reuse)と修理(repair)による長寿命化(retain)とディモノマー化(de-monomer )ディポリマー化(de-polymer )ディラミネート化(delaminate)ディコーティング化(de-coat)等によってマテリアルを繰り返しマテリアルに戻して利用する「ケミカルリサイクルエコノミー」、すなわち、RE 産業とDe産業を中心としたマテリアル循環の輪である。
循環経済化とは、バイオケミカル産業・Re産業・De産業、さらに、脱マテリアル化(脱物質化)、すなわち、マテリアルのサービス化、シェア化(シェアエコノミー)によるマテリアルのサービス産業化を伴う動きである。このマテリアルのサービス化に拍車をかけるのがデジタル化である。このように、循環経済は複合化複層化した動きとして捉える必要がある。EU では、「循環経済2.0」論が盛んだ。「循環経済2.0」とは、「誰一人取り残さない」、循環の輪に「社会に排除された」社会的弱者を包摂すること、「生きる」「暮らし」を基盤に、「生活の質」を大切にする経済のあり様である。
コラム著者