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SDGsコラム「地球にやさしい会社を創る・その1」

SDGsコラム

2023年7月30日

SDGsコラム「地球にやさしい会社を創る・その1」

こんにちは。ATC環境アドバイザーの立山裕二です。これまでエコプラザカレッジの講師として、また環境ビジネス情報の記事などを執筆させていただいておりました。

今回は、環境問題の解決方法のヒントです。
ではスタートします。

地球にやさしい会社を創ろう!

「人にやさしい」とか「地球にやさしい」という表現が多く使われています。しかし「何となく分かるようで分からない」という人も多いのではないでしょうか。

マーケティングの世界では、「あいまいな表現は消費者保護の観点から避けるべきだ」として「やさしい」という言葉が消えつつあります。「地球にやさしいなんて傲慢だ」という声もよく聞きます。

しかし本来「やさしい」とは、「周囲や相手に気を使ってひかえめである、つつましい、おだやかである、素直である、情け深い」、というように「思いやり」を表す言葉です。その中には、傲慢さなど少しも感じません(少なくとも私には)。

古語辞典で「やさしい」を調べてみると、「やせるほど恥ずかしい」と書いてあります。これが日本古来の意味です。やせるほど恥ずかしい気持ちで「どうしよう、今できることは何だろうか」と悩み、苦しみ、そして心から「憂いた人」。このような人を「優しい人」と言うのでしょう。

つまり「地球にやさしい」とは、地球に対する「(環境汚染や利己主義を蔓延させて)やせるほど恥ずかしい」という気持ちであり、「地球に優しい人」とは、「地球に対してやせるほど恥ずかしい、と憂いたすえに、本当の思いやりを持つようになった人」と言うことができると思います。
ここではひんぱんに「地球にやさしい」という表現が出てきますが、このような意味だとお考えください。

■地球にやさしい会社とは?

地球にやさしい会社とは、前項の表現を借りると「地球に対して(環境汚染や利己主義を蔓延させて)やせるほど恥ずかしい、と憂いたすえに、本当の思いやりを持つようになった人たちが働いている会社」ということになります。

そういう意味から、「①地球環境問題に真剣に取り組んでいる会社」だけでなく、「②社会貢献を経営理念の最優先に掲げて実践している会社」、「③倫理的・道徳的・宗教的な使命感から、いわゆる“足るを知る経営”を実践している会社」などが「地球にやさしい会社」といえると思います。

これは、「サステナブルカンパニー」のイメージに近いと言えます。サステナブルカンパニーとは、①経済的にきちんと利益を上げ(経済貢献)、②環境に対して配慮し(環境貢献)、③社会に貢献(社会貢献)している会社のことです。

ちなみにこの①~③をまとめて「トリプルボトムライン(Triple Bottom Line)」といい、企業評価のための重要な指標になっています。

ここで「サステナブル(Sustainable)」とは、「持続可能」という意味で使われることが一般的です。この言葉は、1987年に国連「環境と開発に関する世界委員会(通称:ブルントラント委員会)」が発表した『Our Common Future』という報告書で使われた「サステナブル・ディベロップメント(Sustainable Development)」に基づいています。

サステナブル・ディベロップメントは「持続可能な開発」と訳されていますが、同報告書は「将来の世代が自らの欲求を充足する能力をそこなうことなく、今日の世代の欲求を満たすような開発をいう」と定義しています。

◆「開発」とは?

もともと『開発』は仏教用語で「かいほつ」と読むそうです。以前は、「その土地やその人の特長を活かしきる」という意味で使われていたそうです。

現在使われている「開発」は本当は「乱開発」と呼ばれるべきもので、「乱開発」によって、土地が根こそぎにされていることは衆知の通りです。私たちは、その地方特有の自然を活かした本当の意味での「開発」と、自然を根こそぎはぎ取り、巨大な建造物にとって変わらせる「乱開発」とを混同しているように思います。

◆「地球にやさしい会社」=「自己実現した会社」

報告書で「欲求」と言う言葉が使われていますが、ここで言う「欲求」とは何を意味するのでしょうか。

心理学者のアブラハム・マズローは、人間の欲求は5段階のピラミッドのようになっていて、1段階目の欲求が満たされると順次1段階上の欲求を志すというものです。

マズローによると人間の欲求の段階は、①生理的欲求②安全の欲求③親和の欲求④自我の欲求⑤自己実現欲求からなっているとしています。

①と②は「人間が生きる上での衣食住等の根源的な欲求」、③は「他人と関りたい、他者と同じようにしたいなどの集団帰属の欲求」、④自我の欲求は「自分が集団から価値ある存在と認められ、尊敬されることを求める認知欲求」、⑤自己実現欲求は「自分の能力、可能性を発揮し創造的活動や自己の成長を図りたいと思う欲求」のことです。このうち①から④を「欠乏欲求」、⑤を成長欲求としています。

ブルントラント委員会の定義にある「欲求」は①~⑤のうち、⑤の自己実現欲求でなければならないと思います。このことは、その前提条件として①~④を満たしていなければならないことを意味します。

地球環境の状況を見ると、②の安全の欲求どころか①の生理的欲求すら満たされていない人が多数存在しています(とくに途上国において)。また、このまま何も手を打たなければ、現在③~⑤に居る人の大部分も、真っ逆さまに最下段まで転げ落ちてくることになるでしょう。

このように考えると「今日の世代の欲求を満たすような開発」とは、破壊を意味する「物質的開発」ではなく、人間性や心の豊かさを開発する「精神性の開発(かいほつ)」でなければならないことが分かります。

国際基督教大学の石川光男氏は、「自分らしく」「自分から」「まわりのために」を自己実現の3条件と明言されています。「自分らしく」とは、人の真似をしないで個性を発揮すること。「自分から」とは、自分の努力で自主的に行動すること。そして「まわりのために」とは、自分の長所と特性を生かした「自分らしさ」を社会と自然と文化という3つの環境のために、積極的に役立てる生き方を自ら進んで行うこと、と述べておられます。

ここでいう「地球にやさしい会社」とは、まさに「自己実現した会社」ということができると思います。

■環境経営のキーワードを少しあげます

これからの企業は「地球にやさしい会社」になること、すなわち①経済貢献②環境貢献③社会貢献というトリプルボトムラインの充実が求められます。とりわけ、環境貢献を実現するための「環境経営」が企業の存続・成長にとって最大の課題になっています。

なお「環境経営の定義」については様々な考え方がありますが、私は次のように定義しています。

環境経営とは、①地球上のあらゆる生態系および社会の持続性を確保するために、②循環の視点に立ち、③資源量・廃棄場所・自浄能力という地球の有限性を考慮し、④企業収益と環境保全とを両立させながら、⑤自社にとっての持続性を確保するために行う経営の諸活動である。

ここでは「環境経営」の理解と実践に必要なキーワードを紹介します。単なる用語説明ではなく、その本質を明らかにすることを目的としています。意味を知るだけの物知り博士になるのではなく、常に自社の現状と将来ビジョンを意識しながら読み進めてください。

キーワード1 循環型社会

平成12年に施行された「循環型社会形成推進基本法(キーワード2参照)」によると、循環型社会とは「廃棄物等の発生抑制、循環資源の循環的利用および適正な処分が確保されることによって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会」と定義されています。

簡単にいえば、「自然資源の過剰利用という現在の状況が修正され、効率的な資源利用や適正な資源管理が可能となることにより、少ない資源でより多くの満足が得られる環境への負荷の少ない社会(平成12年版『環境白書』)」のことです。これを実現するためには、「発生したゴミ・廃棄物をどうするか」という発想ではなく、「ゴミ・廃棄物を発生させない」という大原則に立ち戻らなければなりません。
企業活動においても、この大原則が極めて重要になってきています。もはや、ゴミ・廃棄物を無造作に廃棄する企業は「社会悪」とみなされ、存続自体が難しくなるでしょう。

キーワード2 循環型社会形成推進基本法

2000年5月に成立した法律です。使用済み製品や廃棄物などを循環資源と位置づけ、処理の優先順位を①発生抑制②再使用③再生利用④適正処分、と明確化しています。事業者も廃棄物を抑制し、ゴミになりにくい製品づくりの責任を負うほか、リサイクル推進のために必要な場合、使用済み製品を引き取り、リサイクルや廃棄処分を行う義務があるとしています。

基本法の下に位置する個別法では、「容器包装リサイクル法」の対象者と対象物が拡大され、その後「家電リサイクル法」、「食品リサイクル法」、「建設リサイクル法」、「グリーン購入法」も施行されました。これ以後も、「自動車リサイクル法」や「衣料リサイクル法」など、続々リサイクル関連の規制が施行あるいはされています。
このように「規制緩和」が叫ばれる中、こと環境に関しては「規制強化」の方向に進んでいます。京都議定書が発効すると、温暖化に関する規制や炭素税(環境税)などが導入されるでしょう。

◆広い視野で法規制をとらえる

矢継ぎ早に出される法規制を個別に捉えると「国はコストがかかることばかり押しつける」という被害者意識に陥ってしまいます。ここで大切なことは、「必要とするコストは、会社全体の廃棄物量を減らすことで捻出した利益でまかなう」など、広い視野で法規制を捉えることです。

これからは、「調達した資材(資源)をいかにして有効に使うか、また使い切る方法はないのか」をとことん考えることが、利益を確保し、結果として「地球にやさしい企業」になるための第一歩なのです。

◆廃棄物とは?

循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)では、法の対象物として、有価・無価を問わず「廃棄物」として一体的にとらえ、製品等が廃棄物等となることの抑制を図るべきことと、発生した廃棄物等についてはその有用性に着目して「循環資源」としてとらえ直し、その循環的な利用(再使用、再生利用、熱回収)を図るべきことを規定しています。

この場合、「廃棄物」の定義は、廃棄物処理法で規定する「自ら利用したり他人に有償で譲り渡すことができないために不要になったもので、ゴミ、粗大ゴミ、燃えがら、汚泥、ふん尿などの汚物または不要物で、固形状または液状のもの」ということになります。

循環型社会基本法では、この廃棄物に「使用済み物品等又は副産物(廃棄物を除く)」を加えたものを「廃棄物等」と表しています。さらに循環資源を「廃棄物等のうち有用なもの」、またここでの「有用」の意味を「経済性の如何に関わらず再使用、再生利用及び熱回収が可能な状態」としています。

ここで廃棄物を「有価・無価を問わず」としていたり、廃棄物の中に「ゴミや粗大ゴミ」が含まれたり、循環資源を「廃棄物等のうち有用なもの」としたり、有用の意味に「熱回収(廃棄物の定義にない気体であることも多い・・・・固体や液体は廃棄物だけど、それを燃やしてガスにすれば有用物?・・・・最後に放出される二酸化炭素は廃棄物処理法を免れる?)」を入れていたり・・・・まるでジグソーパズルですね。

恐らく「廃棄物」という言葉に対する語感の問題だと思いますが、「廃棄物」は文字通り「最終的に廃棄される物質(固体・液体・気体)」とすべきではないでしょうか。完全廃棄(最終処分)される前の状態を「廃棄物」としていることが、誤解を招く原因と思うのですが・・・・。

私の理解能力の欠如といってしまえばそれまでですが、「多くの人に理解できる法律でなければ目的を達することなどできない」と思いますが、皆さんはどう思われますか。

◆廃棄物をまずは「分離物」と考える

もし、私が法律をつくる立場にあれば「廃棄物等」を「分離物等」にするでしょう。たとえば商品の製造工程で出てくる商品以外のものは、ゴミ箱(廃棄箱)に入れない限り廃棄物では断じてありません。これは明かに「分離物」です。分離物は有価・無価という色は付いていません。その分離物を「有価とするか無価とするか」は法律で決めることではありません。そこで働く従業員や経営者が決めることなのです。

一見、箸にも棒にもかからない「布の端切れや木の切れ端」などでも、学校に持っていけば、りっぱな創造性開発の教材になります。「これを使ってあなたの夢を表現してください」と。

ある会社では無価として捨ててしまうものを、別の会社は有価として活用する。この違いが会社の創造力(想像力)の差であり、実力(収益力)の差として表れるのです。そしてこれを成し得た会社が「持続可能な会社(サステナブル・カンパニー)」なのです。

私は「法律を無視しろ」と言っているのではありません。法律として存在する以上、遵守する義務があります。しかし「それだけでは21世紀に輝く企業になれない」ということです。
もし「地球にやさしい会社」を夢見ているならば、次の式を有効活用してみてはどうでしょうか。

材料総量=商品に含まれる材料+分離物
=商品に含まれる材料+有価物+(商品あるいは有価物になるはずだったが見逃されてしまった分+どうしても活用できなかったもの:無価物+どこかに消えてしまったもの:紛失・揮散物)

ここで最終的に無価物となったものを「廃棄物」あるいは「ゴミ」と称しても差し支えないと思われます。
この関係式を見ると、次のことが分かります。

①「無価物」と「紛失・揮散物」を少なくすればするほど材料の歩留まりが多くなり、ひいては利益が大きくなる。

②同量の商品を作る場合、「商品あるいは有価物になるはずだったが見逃されてしまった分」を「商品に含まれる材料」に転化することで、材料総量を削減できる。

とくに今後は、インプットを最小限にするという考え方が主流になるので、②の努力がきわめて重要になってくるでしょう。

◆「地球満足指数:GSI」と「幸せ実感指標:RHDI」

私は、次のような「指標」を考えています。

① 「地球満足指数:GSI(ガイア・サティスファクション・インデックス)」

物質経済と貿易の規模に加えて、「文化度」、「住民の満足度、ボランティア活動等の住民意識度」、「他地域や地球に対する貢献度」、「資源生産性」、「ファクター達成度」などを織り込んだ指標です。

② 「幸せ実感指標:RHDI(リアル・ハッピネス・ディフュージョン・インデックス)」

その地域で「幸せを実感している人の割合から、幸せを実感していない人の割合を差し引いたもの」です。もちろんプラスの大きいほど、幸せを実感している人の割合が大きいことになります。

しかし、もしその人が悩み苦しんでいてアドバイスを求めてきた場合は、その人に適した方法を見つけ、「自分を好きになる」お手伝いをしてあげてはいかがでしょうか。

コラム著者

サステナ・ハース代表、おおさかATCグリーンエコプラザ環境アドバイザー

立山 裕二