こんにちは。ATC環境アドバイザーの立山裕二です。これまでエコプラザカレッジの講師として、また環境ビジネス情報の記事などを執筆させていただいておりました。
今回から新たな企画をはじめたいと思います。
先賢から環境問題をはじめとする問題の解決方法のヒントを学ぼうというものです。
ではスタートします。
■先賢に学ぶ『環境問題解決と生き方の智恵』・その1
環境問題は、つきつめれば「人間の生き方の問題」だと思います。今、私たちは「生き方の変革」を迫られています。
では、生き方をどう変革すればいいのでしょうか?
アインシュタインは、「我々の直面する重要な問題は、その問題を作ったときと同じ考えのレベルで解決することはできない」と語っています。
もちろん、異論はあるでしょうが、私は大いに参考にすべき見解だと思っあたています。
そこで、このコーナーでは、先賢(先人)が残した言葉や教えの中で、解決に活用できそうなものを選び、私なりの解釈を加えてご紹介していきます。
以前の復刻版になりますが、かなり加筆していますので新たな視点が提供できると考えています。
では、スタートしましょう!
1.サステナブルな社会
農作業の時期を避けて、民衆を使役せよ。
そうすれば、穀物は十分な量を確保できる。目の細かい網を禁止して乱獲を止めさせよ。
そうすれば、魚介類が不足することがなくなる。木を伐る時は、その適した時期に伐りなさい。
乱伐も禁止せよ。
そうすれば、木材に不自由することはなくなる。【孟子:梁恵王(りょうのけいおう)篇】
孟子は2300年も前の人ですが、まるで現代人へのメッセージのようですね。いちいち解説することもないかも知れません。
ただ私としては、前段の「農作業の時期を避けて、民衆を使役せよ」に、時期だけでなく「場所」も付け加えたいと思います。
つまり、「農作業は適地で行い、過剰な栽培をして土地を疲れさせるな」という一文を入れるのです。
今「サステナビリティ」つまり「持続可能性」という言葉が注目を集めています。
一時的な収穫増をねらって、土地の栄養バランスを考えないと、やがて作物が採れなくなってしまいます。同じ品種ばかり連続してつくると、特定の栄養分が極端に少なくなり、収穫が激減することがあります。これを「連作障害」といいますが、サステナビリティとはほど遠い行為ですね。
はるか昔にこのことを見抜いていた孟子は、まさに「サステナビリティ」の「もうし子」ですね(苦笑)。
2.足るを知る
どうして、こんなに大きな災厄が起こるのだろうか?
どうして、こんなにも大きな罪悪が横行するのだろうか?
足るを知らぬ心と、飽くなき欲望とが、その原因なのだ。
足るを知るとは、何かを得てそれに満足することではない。
あるがままの現実に、常に満足することなのである。
【老子:四十六章】
足るを知る。知足。もはや、環境問題を語るとき必ず出てくる「定番」ですね。
現代を象徴する、「大量資源採掘・大量輸送・大量生産・大量消費・大量廃棄」の対極に位置する言葉です。
もはや「大量~」の時代ではないことは、たいていの人が同意していると思います。
最近、多くの人が「足るを知る」ことの大切さを訴えるようになってきました。
しかし30年ほど前は、私が周りの人に「今こそ、足るを知るという心が大切だと思う」と言ったとき、「そんな古くさい話をするな」とか「現代人は、飽食を知ってしまったから、足るを知るなんて無理だよ」と、説教されていたのです。そのときのことを考えると、今は隔世の感がします。
しかし、本当に「足るを知る」を実践しているかどうかは疑問です。私などは、まだようやく身に付きかけている段階です。
周囲の人は私のことを「足るを知るということを知っていますね」と評価してくれるようになってはきました。
それはそれで確かに嬉しく思いますが、内なる声が「あまり実践できているとはいえないね」と伝えてくるのです。
何にでも「もったいない、もったいない」と感謝するお年寄り。
今でも循環の中で生きている先住民族の人たち。
自分をなげうって困った人を援助しているボランティアの人たち。
とてもとても敵いません。
また「内なる声」が囁きます。「まあ、少しずつでも実践することだね。人との比較でなく、自分がどう進化・成長していくかだよ」。
ホントにそうですね。このことも耳にタコができるほど聞いてきたのですが、まだまだ身に付いていませんね。まあ、自分なりに「足るを知る」を少しずつでも日々実践したいと思います。
そして、いつの日かあえて「足るを知る」と意識しなくても、「行動がそのようになっている」自分の姿を発見して、小躍りできたら満足です。
■「足るを知る経済(Sufficiency Economy)」農業哲学について
タイのチャクリー王朝のプミポン・アドゥンヤデート国王は、その住居である“ドゥシット宮殿ジットラダー・ビラ”において、農業、林業および小規模工業等のジラダープロジェクトを実施しています。
宮殿の敷地内には、水田、野菜畑、果樹園、家畜場、魚の池、精米所、酪農場等があり、様々なプロジェクトが進行中だそうです。プロジェクトの目的は、人間の自立のための開発です。
そしてプロジェクトの重要な原則の一つとして、「開発は地理的・社会的条件に合わせて行われなければならない」ということが掲げられています。この開発には、現代技術と知識の適切な発展が求められるのみではなく、持続性の原則と天然資源の開発に基づいて行われなければなりません。
(次号に続く)
コラム著者