Eco Business Information
環境ビジネス情報

環境ビジネス情報

特別コラム 第27回「グリーンクリエイターを育てる『環境共育』その1」について

コラム

2022年6月30日

特別コラム 第27回「グリーンクリエイターを育てる『環境共育』その1」について

こんにちは。ATC環境アドバイザーの立山裕二です。これまでエコプラザカレッジで環境経営やSDGsなどについてセミナー講師を務めさせていただいておりました。

今回は、「グリーンクリエイターを育てる『環境共育』」について考えてみたいと思います。

■グリーンクリエイター(私の造語です)を育てる『環境共育』

環境教育についての議論が様々なところで行われています。よい傾向だと思います。ただ、(何でも知っている)大人が(何も知らない)子供に一方的に教えるという愚だけは避けたいものです。

地球環境問題やSDGsについてすべてを熟知している人は、世界中のどこを探しても存在しません(環境問題の一部に詳しい人はおられますが・・・・)。それほど範囲が広くて奥深い問題なのです。大人も子供も五十歩百歩です。いや、子供の方が感受性が強い分、この問題の本質をつかんでいるように思えます。

その意味で、環境教育は、大人と子供が共に育て合い、育ち合う「環境共育」でなければならないのです。

ここでは、これからの環境共育のあるべき姿をいくつか提示してみたいと思います。

1.知恵を引き出す

「電気代がムダだからテレビを消しなさい」
「地球環境を守るためにエアコンは使ってはいけません」

地球環境問題を知って驚いたお母さん(お父さん)は、子供にこのように言うかもしれません。しかし、突然このように言われた子供はたいていの場合、いま風に言えば「むかつく」でしょう。「環境にやさしくするために」と教える項目の多くは、「~しなさい」「~してはいけない」という形で表現されています。

少なくともこれらは、地球にやさしいかもしれませんが、子供にとっては「やさしい(表現)」とは言えません。しかも、このような項目が50も100も並んでいると、覚えることも難しいし、一つひとつに気を使いながら生活するのは大変窮屈で、とても長続きはしないでしょう。

さらに、このような指導は「子供の創造性を奪いかねない」という深刻な問題があります。というのは、子供に「指導(命令)に同意するか拒否するか」という2つの選択肢しか与えていないことになるからです。

たとえば、「テレビを消しなさい」という命令は、テレビを消すか消さないか、また「エアコンを使ってはいけません」というのは、「エアコンを使うか使わないか二者択一の選択をせよ」と親が迫っているように子供は受け取る可能性があります。二者択一の選択しか与えられない子供に創造性が育つでしょうか。

このようなときは、次のように子供に思いを伝えるとどうでしょうか。

「今日、地球環境問題の講演会に行って本当に驚いたの。~講演の内容をかいつまんで説明する~地球がこんなに破壊されているとは全然知らなかったの。何にも知らなかった自分自身が情けなくって、これからは地球にいいことを何かしようと思ったの。太郎ちゃんも何ができるかお母さんと一緒に考えてくれる?」。

こうして素直に心の内をうち明けられると、子供は「多くの選択肢を残してくれている(信頼されている)」と感じ、「お母さんと一緒に考えよう」と思うのではないでしょうか。

そして、持ち前の想像力を発揮して、素晴らしいアイデアをどんどん出してくるはずです。その中に「テレビを消す」とか「エアコンを使わない」というアイデアも含まれているでしょう。しかも、今度は自分で決めたことなので、きちんと守る可能性は高いのは当然です。

そのうち「テレビを見る時間を今の半分にする」とか「エアコンの温度を夏は30度にして上半身はTシャツだけにする、冬は15度にしてセーターを1枚重ね着する」というような誰にでも実行できそうな具体案が必ず出てきます。

そして、いくつかの具体案を模造紙に書き出し、いつも見えるところに張っておき、家族全員で実行するのです。自分の意見が尊重されたと感じた太郎くんは、ますます豊かな想像力に磨きがかかるに違いありません。

このように環境共育は、子供(もちろん大人も)から知恵を引き出し、創造性を高めるために使いたいものです。「環境にやさしい行動」の数々を周りの人たちに教えて実施させるのではなく、地球環境の実態を話してみたり、自分の思いを伝えることで、その人たちからアイデアを引き出すことが大切です。

もちろんSDGs教育も大人も子供も一体となって育ち合う『共育』であり、環境共育と同様です。

まずは自分自身で考えてもらい、ひとしきりアイデアが出そろったときに、「こんなアイデアもあるよ」と紹介するのが効果的だと思います。

2.環境共育はまず大人から

環境共育(SDGs共育も)で大切なことは「思いやりの心を育む」ことだと思います。地球が今どう変化しつつあるか、どのように語りかけているかを聴き取れる感受性を育てたいものです。

私たちが本来持っている「思いやりの心(やさしさ)」を育てるには、自然に触れるのが一番だと思います。山奥の森林や渓流の中で「自然の景色や音」と戯れるだけで、心からの安らぎが得られ、「思いやりの心(やさしさ)」が甦ってきます。

また、時には、突然の雷雨や暴風、逆巻く激流、猛獣の雄叫びに震えながら自然に畏怖するのも、「思いやりの心(やさしさ)」を体感することになるでしょう。年に何度かはこうした体験を持ちたいものです。

ところで、一年中大都市で生活している私たちが「思いやりの心(やさしさ)」を育む方法はないのでしょう。実は、毎日の生活の中で実行できる方法があるのです。

たとえば、通勤・通学や買い物でいつも通る道に、どのような草花や樹木が生きているかお気づきでしょうか。「えっ?、そんなのあったかなあ」とか「確かに草花はあったけど、はっきり覚えていない」という方が多いかもしれません。さっそく、今日からよく観察してみませんか。きっと、思った以上に多くの草花や樹木が育っていることに驚かれるに違いありません。

また、どんなところでもたくましく育つ雑草を見て、「雑草と決めつけてゴメンね。君たちは素晴らしい生命力を持っているね」と感動することもあるでしょう。そして、毎日観察していると、「昨日は花が3つ咲いていたけど、今日は4つ咲いている」ということが分かるようになり、ついには「今日はいつもと比べて寂しそう」というように微妙な変化に気づくようになります。

そしてやがて、草花と会話ができるようになるかもしれません。これは決して超能力ではなく、本当のやさしさを思い出して大きく育てれば、誰でも顕在化する能力のひとつのような気がします。

ただし、この方法は子供だけではなく、むしろ私たち大人が初心に戻って体験してみることが大切です。子供の世界に「いじめ」があるのは、大人の世界に「いじめ」があるからに他なりません。私たち大人が変われば確実に子供は変わるでしょう。ひょっとして、子供はとっくに変わっていて、変わっていないのは大人だけかもしれませんが・・・・。

3.イメージできるように工夫する

人間は、結果がイメージできていると行動に結びつけやすいものです。反対に、イメージできないことは、なかなか実行が困難です。環境共育でも、イメージがはっきり浮かぶような工夫が大切です。

たとえば、ゴミ問題の大変さと解決策をイメージする方法をあげてみましょう。

ささいなことでも、これが何千万人も集まると考えられないくらいの効果があります。ひとり1㎏のゴミも日本全体では4千数百万トン。1㎏という重さはイメージできるでしょう。では、4千万トンは?・・・・たいていの人は、おそらく見当もつかないでょう。

東京ドーム115個分といっても、まだピンとこないかもしれませんね。ここでまず重要なことは、「1㎏というイメージできる量が日本の人口分集まると、イメージできないような量になってしまう」ということです。

この事実をプラス発想に使いましょう。一人ひとりの省エネはわずかでも、日本の人口分いや世界の人口分が集まれば想像を絶する効果が生まれることになります。

このことを実感する面白い方法があります(学校の場合)。

たとえば、全校生徒にひとり1個ずつ空き缶を拾って学校に持ってきてもらいます。そして、それを校庭や体育館の1カ所に集め、ひとり1個でも全校生徒分集まればすごい量になることを見てもらいます。

次に、誰かを指名して「この空き缶をひとりで処理してください」とお願いするのです。指名された生徒は、絶句するか「こんなのひとりでは無理です」というと思います。そのとき、「では、持ってきたときと同じように、全員ひとり1缶ずつ持ち帰ってください」とお願いするのです。そうすれば、あっという間に空き缶の山が消えるのが実感できるでしょう。

そして、最後にリーダーが「『自分ひとりくらい』の集合が空き缶の山、『自分ひとりでも、自分ひとりから』の集合で空き缶の山が消えるのが実感できましたか。だったら、ひとり2缶だともっと素晴らしいことが起こりますね。でも空き缶が出なければ、拾う必要もなくなりますね」ということを伝えるのです。

生徒数が少ない場合は、町内会などで、また会社内で実施してみてはいかがでしょうか。

このように、イメージできること、実感できることを「みんなで創り出して」みましょう。「みんなで創り出す」。これこそが、本当の意味で「環境共育」といえるのではないでしょうか。

次号では、「グリーンクリエイターを育てる『環境共育』その2」について書きたいと思います。

コラム著者

サステナ・ハース代表、おおさかATCグリーンエコプラザ環境アドバイザー

立山 裕二