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特別コラム 第24回「未来の経営者のために」

コラム

2022年3月27日

特別コラム 第24回「未来の経営者のために」

こんにちは。ATC環境アドバイザーの立山裕二です。これまでエコプラザカレッジで環境経営やSDGsなどについてセミナー講師を務めさせていただいておりました。

今回は今期の最終に当たり、心理療法家の大家であるカール・ロジャースが語る「未来人の特性」を参考に”未来の経営者”について考えてみたいと思います。

■未来の経営者のために

前号では、「孫子の兵法」を基調として21世紀の経営者像を探ってきました。皆さんの頭の中にも、はっきりしているか、ぼんやりかは別にして、何らかのイメージが湧いているのではないでしょうか。

そのイメージを大切にすると言う前提で、心理療法家の大家であるカール・ロジャースが語った「未来人の特性」をご紹介したいと思います。未来に飛翔する経営者像(ビジネスマン像→人間像)をより明確にするために、参考にしてください。

●未来人の特性

私たちは、「人々が地球が丸いと知った後も世界が平らである」と考えたように、自分にとってなじみある世界で生きていこうとするでしょう。しかし、人間や世界を捉える新しい方法が浸透し、私たちの思考と生活の基盤になり、変化は避けられないものとなります。
・・・・カール・R・ロジャース

SDGsが盛り込まれている「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、transforming our world (私達の世界を劇的に変える)と謳っています。

カール・ロジャースはアメリカの心理学者で、わが国のカウンセリングと心理療法にも大きな影響を与えた人です。その彼が、人間の未来に対して予言ともとれるメッセージを残しています。そして、「未来人の特性」として以下のものを挙げています。

①開かれていること

自分の内部と外部の世界双方に心を開き、経験、新しい見方・生き方・考え・概念に開かれている。

②真実の希求

ありのままを伝える手段としてコミュニケーションを価値づける。文化がもつ偽善、欺き、もったいぶった表現を否定する。

③科学と技術への懐疑

自然世界を征服し、人々の操作に使用される現在の科学と技術に深い不信を抱いているが、バイオ・フィードバックのように自己認識を高め、自己管理を強化するのに使われる場合は、科学の熱心な支持者となる。

④全体性への希求

肉体と精神、健康と病気、知性と感情、科学と常識、個人と集団、正気と狂気、仕事と遊びなどが区別される世界に住むのを嫌い、思考、感情、肉体的、精神的、治癒的エネルギーが経験に統合される生活の全体性を求める。

⑤親密さの要求

新しい形態の親密さ、親近感、共通目標を探し、言葉も言葉にならない思いも、感情も知性も生かされる伝え合いが豊かにある共同体を探している。

⑥停滞しない個人

人生で確実なのは変化だということを見ぬいており、この危険をはらんだ生き方を喜んで受け入れ、力いっぱい変化に立ち向う。

⑦思いやり

必要な時には進んで他人を助ける。やさしく、繊細な道徳に縛られない、評価的でない思いやりを持つ。職業的援助者には疑いを持っている。

⑧自然に対する態度

自然を愛し、親しみを感じていて、生態学に関心があり、自然を征服することよりも自然の力と協力することに喜びをおぼえる。

⑨反制度的であること

高度に組織化された融通のきかない官僚制度に反対で、制度は人々のために存在すべきであり、逆であってはならないと信じている。

⑩内にある権威

自己の経験を信頼し、外部の権威には深い不信を抱く。また自分で道徳的判断を下し、不正だと見なす法には反抗する。

⑪物質的基準を重視しない

基本的に物質的豊かさや報酬には無関心で、お金や地位は目標ではない。裕福な生活もできようが、それは必要とされない。

⑫精神性へのあこがれ

未来人は探求者であり、個人を越えた生活の中に意味と目的を見つけたいと願う。宗教に進む人もいるが、多くの人は人類が見出した個を越えて存在する価値や力を検討しようとする。彼らは内的に平和な生活を望む。時には、彼らは変化した意識状態の中で、宇宙の統一と調和を経験する。

私は、カール・ロジャースが描いていた”未来人”は、SDGsの根本精神を持っている人といえるのではないかと思います。

★皆さんは未来人になれるでしょうか。もう未来人になっているかもしれませんね。

さて、ここまでお読みになって、どのように感じられたでしょうか。「よし、今すぐに実践しよう」「頭では知っているつもりだが、理想と現実は違う。やはり実行するのは難しい」など、様々でしょう。

このような方のために、最後に王陽明の言葉を2つご紹介します。どのように感じ、実践するかは、すべて皆さんにお任せします。経営者として、またビジネスマン、そして人間として考えてみてください。

【王陽明の言葉1】

いまだ、知って行わない人などいない。知っているのに行わないというのは、それは本当のところ、まだよく知らないということなのだ。

【王陽明の言葉2】

私は、道においても未熟であり学も粗雑であるが、誤って諸君の師となった。毎夜毎夜思う、私には悪さえもなくなっていない、もちろん過ちは言うまでもない。

ある人は、師を諫めるには正直でしかも無礼にならぬように、婉曲でしかも隠さないようにと言っている。

私に善いところがあれば、諸君の諫言によって善いところがいよいよ善くなり、悪いところがあれば、それによってこれを除去することができるのである。
そもそも教えと学は、互いに益あるものだ。人に善いことをするように諸君にすすめるには、まず私から始めねばならぬ。

そうですね。まずは「それぞれの私から」ですね。

次回からは、エコプラザの役割のひとつである「環境問題や環境経営の啓発」について、
SDGsを適宜交えながら考えてみたいと思います。

コラム著者

サステナ・ハース代表、おおさかATCグリーンエコプラザ環境アドバイザー

立山 裕二