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特別コラム 第17回「SDGsや環境経営に取り組むメリット その2」

コラム

2021年8月28日

特別コラム 第17回「SDGsや環境経営に取り組むメリット その2」

こんにちは。ATC環境アドバイザーの立山裕二です。これまでエコプラザカレッジで環境経営やSDGsなどについてセミナー講師を務めさせていただいておりました。

今回は、前回に引き続き「SDGsや環境経営に取り組むメリット(その2)」について考えてみたいと思います。

2.新商品、新サービス(創造性)開発効果

今、どの企業も懸命に新商品や新サービスを開発し、市場で優位に立とうとしています。そのためには、従業員の創造力を活性化することが不可欠です。

どこの企業でも「異業種と交流しよう」とか「違った視点でものを見よう」というスローガンが呪文のように唱えられています。

そこで、経営者自ら異業種交流会に参加したり、従業員を経営戦略や潜在能力開発セミナーに派遣したりと大変な努力を払っているようです。そのための費用は、決して安いとはいえません。

実は「環境配慮活動」そのものが、余りお金をかけずに創造力を向上させる「創造力活性化トレーニング」なのです。

環境配慮のために知恵を産み出すプロセスには、「異業種的な発想」と「現在の市場に対する見方とは違った視点」のどちらも必要です。さらに全体を見る鳥瞰力や論理的なシステム思考力も必要です。

つまり前回(前項)の事例(特に<事例4>)に見られるように、環境配慮活動やSDGsに取り組むこと自体が、創造性開発、ひいては新製品や新サービスが生まれる源泉となり得るのです。もちろん企業だけではなく、子どもたちの創造力開発にも役立ちます。ぜひともお試しください。

3.信用アップ効果

環境問題の解決に積極的に取り組んでいる企業を応援しようという人(グリーンコンシューマー)が、最近はSDGsの実現を果たそうとする人が確実に増えています。グリーンコンシューマーから見て、目先の利益にとらわれずに、未来の世代に美しい地球環境と天然資源を残そうとする企業は大変魅力的な存在です。

一方、一般の消費者にしても、世の中に存在している様々な問題を無視して私利私欲に走る企業よりも「問題解決に本気で取り組む企業の方が信用度が高い」と判断するのではないでしょうか。今後は、環境経営やSDGsに取り組む企業が今以上に信用度を高めていくことは間違いないでしょう。

反対に言えば、環境経営やSDGsに取り組まない企業は、信用度が低下し、やがて淘汰されることになるでしょう。

4.従業員の使命感と社会貢献意識の醸成効果

人間は「自分は会社のひとつの歯車にすぎない」と考えるよりも、「自分の仕事が世の中に役立っている」と自覚する方が働きがいを感じるものです。「環境問題や世の中に存在する問題を解決しよう」と真剣に考える経営者の使命感が社員に伝わることで「よし、精一杯社会に貢献しよう!」という意欲と生きがいが彼らに湧いてくるでしょう。

そして資源の節約(=地球環境の保護、貧困対策、技術革新など)によって、「仕事を通じてSDGsの実現に貢献できる」。なんて素晴らしいことでしょう。

このことが自ずから良い結果につながり、それが一層の使命感と社会貢献意欲をかき立て、さらに業績がアップするという善循環に発展するのです。

電気・ガス・水道・原材料などの経費を節減できた分だけ、実は地球環境ひいては社会の様々な問題の改善に直接貢献しているということを先に述べました。SDGsの実現に貢献するのは、何も新サービスや新商品の開発だけではない」ということを改めて強調しておきたいと思います。

◆廃棄物削減は企業人の責任

前にも述べましたが、私たちは「廃棄物を捨てているのではなく、資源すなわちお金を捨てている」ことに気づく必要があります。廃棄物という言葉を使えば、捨てることを正当化してしまいます。しかし、お金を捨てているという観点に立てば、「もったいない、できるだけ有効に使おう」という発想になるのではないでしょうか。

もっと端的に言えば「地球環境を守るために廃棄物を削減する」のではなく、「棄てる物をできるだけ少なくする、つまりお金を無駄にしないのは経営者ひいては企業人(もちろん一般市民も)の重要な責任」です。そういう意味で「環境と経済を分けて考えると本当の問題解決には繋がらない」のです。

これらの事例は、以前から品質管理などで当たり前に取り組んでいた実践活動に他なりません。

しかし、これが「地球環境保全やSDGsの実現に大いに役立つ」ということを従業員に徹底できているまだまだ企業は少ないようです。経費の節減は、会社の中にいながら(仕事をしながら)地球環境に貢献できるとてもポジティブな活動です。そのためには、「経営者の使命感をいかにして従業員に伝達するか」が最大のポイントになるでしょう。

◆乾いた雑巾を絞る

いわゆる識者の中には、「日本の企業は、省エネルギー・省資源対策に関して”乾いた雑巾状態”になっているので、これ以上の削減は困難だ」という人がいます。「日本は温暖化対策で”乾いた雑巾状態”だから、これ以上望まれてもそう簡単にはいかない」というようなことを仰った政府関係者もおられます。

確かにオイルショック以来、日本企業では省エネ・省資源化が進み、非常に効率的な生産システムを創り上げてきました。これは堂々と世界に誇れる快挙です。

しかし、本当にこれ以上は無理なのでしょうか。

本来、「乾いた雑巾を絞る」というのは「乾いたように見える雑巾であっても絞れば多少の水が出るように、合理化もやり尽くしたように見えても諦めてはいけないのだ」という意味です。「乾いた雑巾だから無理」ではなく、「乾いた雑巾に見えるが、まだまだチャレンジする価値がある」ということです。

前者(乾いた雑巾だから無理)の立場をとる人は、省エネ・省資源を「節約」という観点に偏りがちです。もちろんこの姿勢は大切なことですが、やがて行き詰まることが多いようです。

一方、後者(乾いた雑巾に見えるが、まだまだチャレンジする価値がある)の場合は、例えば以下のような発想を総動員して対処します。

●濡れた状態にも程度があると認識する→雑巾の水分量を減らす方法を考える→元々の水分量を減らすことを考える→元々のエネルギー使用量・資源使用量を削減する。
●雑巾の数を減らす。
●雑巾より有効な代替物を探す。
●雑巾も代替物も使わずにすむ方法を考える。
●製造プロセスを見直す。
●製造プロセスそのものを変更する。
●そもそもその部品・商品は必要なのかを検討する。
●その部品・商品がなくても同じ機能を発揮させる方法はないかを考える。
●その部品・商品を廃止する。
●個々の企業だけでなく、業界全体(場合によっては世界全体)で部品や商品を統一化す ることを提案する。そのためには多くの企業同志(異業種間も含む)でのパートナーシップによる共創が重要となるでしょう。

このように様々な可能性があります。

乾いた雑巾を「だからこれ以上無理」と自ら限界をもうけてしまうのか、その限界を外して上記のような創造性を発揮するのか、どちらが企業にとって重要かは明らかですね。

世の中の常識や識者の高説に囚われることなく、対症療法だけにとどまらない根本療法を考えて実践することを心がけていただきたいと思います。

次回は「リサイクルのあれこれ」について考えてみたいと思います。

コラム著者

サステナ・ハース代表、おおさかATCグリーンエコプラザ環境アドバイザー

立山 裕二