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特別コラム 第4回「これからのビジネス」

コラム

2020年7月21日

特別コラム 第4回「これからのビジネス」

こんにちは。おおさかATCグリーンエコプラザ 環境アドバイザーの立山裕二です。
これまでエコプラザカレッジで環境経営やSDGsなどについてセミナー講師を務めております。

今回の本題に入る前に、まず前回取り上げた「コミュニケーションの問題」について、企業内にありがちで、しかも多くの会社が気づいていないケースについて考えてみましょう。

お客様って誰のこと?

企業や店舗において「お客様」という言葉が使われていますが、いったいお客様って誰のことでしょうか?
営業マンにとって、技術者にとって、設計者にとって、研究者にとって、事務員にとって、課長にとって、部長にとって、社長にとって、それぞれ「お客のイメージ」が違うはずです。
にも関わらず「お客様第一でいきましょう!」という掛け声が飛び交っています。

このイメージの違いをみんなで意識しあい、話題にしている「お客様って誰のこと?」と話し合ってみるのも、混乱を防ぐ効果的な方法です。

こんなところにも会社(組織)に潜む問題が隠れています。
ぜひ意識していただきたいと思います。

これからのビジネスについて

さて、今回は「これから(新型コロナウィルス感染症後-アフターコロナだけではありません)のビジネス」について考えたいと思います。

今回のお話は30年以上前から提案してきたことではありますが、ごくわずかの人からしか賛同を得ることができませんでした。人によっては「拒否感が湧き出る話」かもしれません。

しかし私は、企業やお店にとっての最大のリスクでありチャンスは、「消費者の価値観の転換」だと思っています。すでに薄利多売戦略などは成り立ちにくくなっています。

ここで提案する手法は、これからの価値観の変化に対応するビジネス展開だと思い、批判を承知で取り上げます。

ビジネスの形態が変化する可能性について

今後も、これまでにパンデミックを引き起こしてこなかった感染症(もちろん新型コロナウイルス感染症以外でも)が猛威を振るうであろうし、地球温暖化の防止や資源の制約のことを考えると現在の経済システムでは対応できなくなることが予想できます。

対応できないのは、「今の経済システムを前提として社会が動いている」というのが、ひとつの理由です。
私は「新しい社会・経済システムを構築し、そこで未来ビジョンを描かなければならない」と思います。

新しい社会・経済システムとは?

今から掲げる文章は、東日本大震災直後に書いたものです。

新たなシステムの提案を行い、以後しばしばブログなどで提案を続けてきました。少しずつ賛同者が増えてきましたが、ここで改めて提案させていただきます。

もちろん私の提案は抜け穴だらけだと思います。この提案を踏み台にして、素晴らしいアイデアが実行に移されることを願っています。

「物がたくさん売れるほど儲かる仕組み」は永続可能か?

大震災をきっかけに、生活の見直しが不可欠になりました。特に節約・節電の必要性が叫ばれ、日本全体の経済が縮小するのでは、と心配されていました。

しかし新型コロナウィルス感染症だけでなく、地球温暖化や資源のことも考えると、現状の経済システムでは対応できないと思われます。

単純化すると、今の経済は「物がたくさん売れるほど儲かる仕組み」で動いています。しかも、ほとんどの人がまるで宇宙の真理のように信じているようです。

その人たちは、「物が売れなくなったら経済が縮小する」、「経済が縮小すると不幸になる」と思い込んでいます。

私は確信します。これは真理ではありません。あくまでも、現状の仕組みがそうなっているからに過ぎません。

では、どんな仕組みがあるんだ?そんな声が聞こえてきそうですね。

それは、「物を売らない方が売るよりも儲かる仕組み(システム)」です。

「売れても売れても環境への負担が増えない仕組み」へ

多くの人は、売上高=単価×販売量と考えているようです。
つまり、「販売量が増えれば増えるほど儲かる」という仕組みです。
単価が低下傾向にある中で、ほとんどの人が躍起になって販売量を増やそうとしています。しかし、地球の資源量・廃棄場所・自然の浄化能力には限界があります。

当然、この仕組み(システム)が長続きすることは(私には)考えられません。
最近になって、新しい仕組みが少しずつですが頭角を現してきました。

それは、「使用する資源やエネルギーが少ないほど儲かるシステム(使えば使うほど損をするシステム)」
さらには、「売れても売れても環境への負担が増えないシステム」です。

こんなことは可能なのでしょうか?
私は可能だと思っています。

ここでは1例をご紹介しましょう。

専門的には「サービサイジング」といいますが、「物を売るのではなく機能を売る」という考え方です。
たとえば、「化粧品を売るのではなく機能を売る」というアイデアです。

化粧品の本質的な機能であり目的は、『使用者の美顔を保つ』ということです。だとしたら、たとえば「1年間、あなたの美顔を保ちます」というサービスが提供できるはずです。

カウンセリングやレクチャーを併用して年会費制の『美顔維持契約』を結ぶのです。メーカーとしては、化粧品の使用量(持ち出し)が少ないほど利益が上がることになりますし、お客様も「美顔が維持できる安心感」が得られます。

もし化粧品がOEM商品であったとしても、利益配分割合を予め設定することで、商品納入企業も化粧品の使用量が少ないほど利益が増えることになります。

また原料購入量を減らすことができるので製造原価が低減し、製造プロセスも小さくて済みます。
輸送量も少なくなり、配送に伴う燃料費の削減につながります。
さらに廃棄物量の削減も期待でき、ライフサイクル全体としての環境負荷の低減に寄与します。

このような動きを最近は「サービサイジング」などと呼びますが、言葉なんて気にする必要はありません。言葉の定義は、多くの実績が出た後で研究者が分析した「後付け」に過ぎないのですから。

そもそも、廃棄物はお金を出して買ってきたものを廃棄するのですから、「廃棄物はお金を捨てている」ことになります。つまり「廃棄物を削減するということは、捨てているお金を減らす」ということです。

「環境か経済か?」という短絡的な発想ではないのです。

新型コロナウィルス感染症に関しても「命を守るか経済を守るか」という二者択一式の議論がありますが、経済のあり方についてそろそろ再考する時期ではないでしょうか。

要は、「環境に配慮することが、買い手も売り手も得をするシステム」、「資源やエネルギーを使わないほど儲かる仕組み」を追求することです。

たとえばインターネット・ビジネス、とりわけ音声・動画・文字データなどをダウンロードできる情報商材は、すでにサービサイジングの担い手となっています。

紙資源不要、運搬エネルギー不要、在庫不要、倉庫不要、店舗不要など、環境への影響が低減できるビジネスの代表となるに違いありません。

しかも、「売れても売れても環境への負担が増えない仕組み」が構築できます。

以前、このお話を建設業の方にしたところ、「建設業界では難しい」いう常識的な返事が返ってきました。
しかし、「電気代を節約した分、家賃が還ってくる住宅」とか、「材木廃棄物を日曜大工用として提供し、集まった募金で植林する」とか、アイデアはいくらでも出てくるはずです。

「物を売らない方が売るよりも儲かる仕組み(システム)」は、地球温暖化や資源枯渇のことを考えると、この仕組みが未来のビジネスモデルになる。

私はそう確信していますし、そのような社会システムを創らなければならない。
私はそう決意しています。

新しい酒は新しい皮袋に盛れ

「温室効果ガス排出量を1990年比で25%削減する」という目標に対して、経済団体などは「無理がある」という見解を発表しています。

識者の中には、「経済発展が阻害される」と目標そのものに反対する人も多いようです。

従来のような「単価×販売量=売上高」という概念では、「温室効果ガスの削減に伴い販売量が減少し、売上高が低下する。そしてその集大成であるGDPが減少する」という発想が出てきて、実現にブレーキがかかるのはある意味当然でしょう。

しかし、「新しい酒は新しい皮袋に盛れ」というように、新しい目標を実現するためには新しい仕組み(システム)を構築しなければならないのです。

その新しい仕組みとは、前述の「使用する資源やエネルギーが少ないほど儲かるシステム(使えば使うほど損をするシステム)」です。

ここでは(30年前に提案して没になった)1例をご紹介しましょう。

ある会社で「廃水のpH値をコントロールする装置」を販売していたとします。
pH値が高いと酸性の薬品を、低いとアルカリ性の薬品を注入します。
従来の方法は、制御方法の関係で薬品の使用量が多くなっていました。
そこで、新しい制御方法によって薬品の使用量が最小限で済むようなシステムを開発したのです。

ところが、販売サイドからクレームが付きました。「そんなのが世に出たら、薬品が売れなくなるじゃないか」と。

・・・・こんなとき、どうしたらいいのでしょうか?

結論を書きますと、「システムや機器を販売するのではなく、機能を売る」、つまり「例えば、pH値を7にすることを保証する契約を結ぶ」のです。

そうすると、売る方としても「薬品使用量が少なくなればなるほど、(持ち出しが少なくなり)利益が大きくなる」ことになります。

もちろん、買う方も「薬品タンクが小さくてすむ」、「中和反応で発生する生成物が少なくなる」、「メンテナンスが楽になる」「輸送コストとエネルギー消費量が削減できる」、など大きなメリットがあります。

結果として社会全体としての環境負荷も低減できます。

このアイデアは、前述のような「化粧品を売るのではなく、顧客の美顔を年間○○万円で維持する契約を結ぶ」など、あらゆる分野で応用可能です。

後は、想像力、創造力、アイデア力の問題です。
要は、「環境に配慮することが、買い手も売り手も得をするシステムはないか?」「資源やエネルギーを使わないほど儲かる仕組みはないか?」を追求することです。

できない理由は無限にあります。できる理由以外は、すべてできない理由です。

一方、できる理由は1つあればいいのです。

できないと思い込んでいると「できない理由ばかりが目につき」、できると信じていると「できる理由を発見する」ものです。
社会全体のサービサイジング化を促進する政策をすすめ、「単価×販売量=売上高」という固定観念から抜け出すこと。
国民全体で「できる理由」を考えること。

これが「アフターコロナの有力なビジネス」や「温室効果ガス25%削減」を実現する(ひとつの)「有力な」手段ではないでしょうか。

このようなアイデアに対して、もちろん反論も多いと思いますが、提言することで何かが動き始めます。皆さんなりに自分にできることや提言をどんどん発表していただければ幸いです。
欧米発・欧米主導ではなく、次号で挙げますが例えば「もったいない」を抱合した日本発・日本主導のSDGs」を提案すべきです。

これも、SDGs実践のひとつではないでしょうか?

次回は、「もったいないとサーキュラーエコノミー、そしてその融合」について考えたいと思います。

コラム著者

サステナ・ハース代表、おおさかATCグリーンエコプラザ環境アドバイザー

立山 裕二